正確な測定を行うために、幾何公差の理解は避けては通れない重要事項です。幾何公差とは、形状や位置関係などの誤差の許容範囲を指します。設計意図を正しく伝えるために図面に記載される、なくてはならない情報です。幾何公差は15種に分類されます。
今回は、位置公差に分類される「位置度」についてACCRETECHタイのセールスエンジニア人見とセールスマネージャーのTIPが解説していきます。
TIPさん、こんな図を見たことありますか?
上の図面は位置度を表しています。どんな指示がされているか分かりますか?
うーん…記号はみたことがありますが少し難しいですね…。
位置度は、穴と軸がはめ合うような箇所によく使用される幾何公差です。簡単に言うと「基準となるポイントに対してどのくらいずれているか」を数値化したものです。
部品は基本的に穴と軸が多少ズレていても穴に軸がはめ合う事ができるように公差を設定します。
上の図は部品が二つあり、左側の図がメス側(穴)、右側がオス側(軸)でそれぞれの部品が組み合わさって使用されることをイメージしてください。
上の図面のような指示がされている場合、軸と穴の位置関係が同じ位置にあれば問題なくはめ合いますが、全く同じ位置関係でつくることはできません。多少のズレが必ず生じてしまいます。そんな時に使用するのが今回の“位置度”です。"それぞれの位置関係がここまでならズレても問題無いですよ"という意味になるんです。ちなみに、基本的に穴は大きめ、軸は小さめで作られます。
思い出しました!お客様からも質問をいただいたことがある項目です。
位置度を考える上で最も大切な概念は「最大実体実効状態」(Maximum Material Virtual Condition:MMVC)です。これは、公差域の中で穴が一番小さい状態で軸が一番大きい状態を指します。この最大実体実効状態にて、穴と軸がズレていてもはめ合うための許容値を設定するのが位置度の役割なのです。
例の図面の場合、クリアランスは以下のようになります。
*赤字が、穴が一番小さくて、軸が一番大きい状態(最大実体実効状態)の寸法になります。
10.1 mm(Min Hole size)-9.9 mm(Max Shaft size)=0.2 mm
つまり、それぞれの穴が0.1 mmずつ位置がずれても許容範囲という理解になるのです。図面に記載されている位置度φ0.1はこの許容範囲を表しています。
Mを円で囲ったこの記号。何を表しているかわかりますか?
何か特別な意味を持つ記号だったと記憶していますが…。
これは『最大実体公差(ボーナス公差)』、通称“マルエム”と呼ばれている穴位置を指示する際に使用される記号の一つです。名前の通り、幾何公差の範囲をゆるくする意味合いがあります。実は品質管理に従事する方でも意外と見落としがちなポイントなんです。
上の図面の位置度公差には、マルMがあります。実際に出来上がった穴の大きさが10.15 mmだったとしましょう。
この場合、最小穴径(10.1 mm)より0.05 mm大きいので、位置度の公差に0.05 mm足される事になります。つまり実際に測定した穴径が最小穴径より大きかった分だけ、公差がボーナスされるのです。
このマルMは、実形状に応じて公差を広げることで、製品の機能を損なわずにNG数を減らすことができる重要な役割があるんです。QAQC業務に関わる方は必ずおさえておきたいポイントです!
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