ASEANのものづくりを支えるマルカ(タイランド)のオーバーホール
ホブ盤、ブローチ盤、シェービング盤など歯車加工機のケアにお困りではないだろうか。 これらの装置のオーバーホールや修理は、熟練したプロに任せたいところだが、専門技術を持つエンジニアの数が非常に少なく、世界的にも稀有な存在であるという。 機械商社マルカマシナリー(タイランド)(以下、マルカ タイ)のオーバーホールは、業界でも珍しい歯車加工機のメンテナンスを得意としており、ASEAN領域を中心に高い支持を得ている。
今回は、「歯車加工機のドクター」の異名を持つ、エンジニアの文東氏にお話を伺った。
不具合の原因特定が難しい、歯車加工機のオーバーホール
文東氏は、マルカ タイのサービス部に所属する、機械・研削盤修理のスペシャリストだ。 なかでも、歯車加工機のオーバーホール工事を任せられる貴重な存在として、タイでは「文東さんがいなければ困る!」と評されているほど。
編集部歯車加工機のオーバーホールができる人材って、どうして少ないんですか?
文東氏
ホブ盤やシェービングマシンといった機械は、旋盤やマシニングセンタとは測定の際に注意すべき項目が異なるために、異常値の判断が非常に難しいんです。 それに、たとえばホブ盤は5軸あるので、2軸や3軸の機械以上にどこに不具合があるのか発見するにも苦労します。不良の原因も多岐にわたるもので…
編集部
難しくて豊富な経験値が求められる作業だから、それをこなせる職人が少ないんでしょうか。
文東氏
それもありますが、一般的な機械と比べて市場に出回る台数が少ないから、多くの人はやりたくないと思います(笑)
煩雑な上に、ニッチな分野なんです。
編集部
その分野をひたむきに追求してこられたんですね!
文東さんは、どのように歯車加工機のオーバーホール技術を学んだのですか?
文東氏
私がタイに赴任した当初、私の師匠といえる素晴らしい技術を持った職人がマルカにいました。自動車メーカーで長年エンジニアリングを担当した経験を持つ方でした。その師匠から厳しく指導されて、技術を身につけました。現在は、私がタイのエンジニアたちに教える番です。
▲きさげ加工を学ぶ文東氏(左)と師匠(右)
▲2012年頃の文東氏。オーバーホールでは、分解して部品の1つ1つまで整備する
きさげ加工やターカイトの張り替えなどの高度な特殊作業
編集部
マルカ(タイ)が支持される理由は、高度なきさげ技術があるからですか?
文東氏
きさげ加工も難しいですが、ターカイトの張り替えなど特殊な作業を行えるからですね。
ターカイトは樹脂で作られた非常に滑りのよい摺動材です。柔らかいので、傷や鉄粉が食い込みやすく、取り扱いや環境に注意が必要なのです。 このような技術をタイのエンジニアたちに継承し、今では私と同等レベルの技術を有しています。
▲現場で活躍するマルカ タイのタイ人エンジニア
編集部
メーカーとの連携も重要なんですね。
文東氏
そうなんです。正式にサービス代理店契約を結んでいるメーカーもあります。
図面や技術資料を共有されるというのは、信頼の証かと思います。
★中村留精密工業株式会社
★(株)カシフジ
★株式会社神崎高級工機製作所
・株式会社不二越(NACHI) ほか
★はタイでの正規サービス代理店
編集部
今後の目標を教えてください。
文東氏
タイを起点に、近隣国(インドネシアやフィリピンなど)のフォローもできる体制を目指しています。最終的には、私がいつかタイを離れても 「マルカに任せておけば大丈夫」といわれる存在になるよう、会社に技術を残したいですね。
機械故障の未然防止のための定期的なオーバーホールが大切
マルカ タイでは販売していない機械や装置のオーバーホールも対応可能だ。 メンテナンス不足で機械に大きなトラブルが発生してしまうと、製造工程に支障が起きてしまう。問題を未然に防ぐためにも、日頃からの定期的なメンテナンス、早めのオーバーホールをおすすめする。
もちろん、歯車加工機だけでなく、CNC旋盤やマシニングセンタなどの工作機械を含む設備のオーバーホールや修繕も対応可能だ。