一般的にERPは、企業の経営資源である人・モノ・金・情報の分配を最適化し有効活用する仕組みのことを指す。
マテリアルオートメーション(タイランド)(以下略称MAT)は、生産管理に特化したERPシステム『mcframe CS』を製造業に提供している。
本稿では、同システムの導入により業務改善に成功したタイ芝浦電子の山下社長、藤田工場長、成田経理マネージャー、情報システム部の阿部氏の4人に話を伺った。
編集部:
ERP mcframeを導入した理由をお聞かせください。
山下社長:
以前は、会計システムを拡張して生産管理を行なってきました。
製造管理という意味では、無理のある使い方だったと思います。
将来のビジョンを考慮し、システムの刷新が必要だと考えました。
藤田工場長:
データのブラックボックス化も問題でした。生産管理は各担当が行なっていたため、同じ事を尋ねても担当ごとに答えが異なる状況でした。
成田経理マネージャー:
また、システムからダウンロードした情報を加工して使用するため、使い勝手があまり良くありませんでした。
コアになる会計システムは不具合が多く、サポートセンターがシンガポールにあったので対応スピードや、言葉の問題もありました。
編集部:
システム導入に関して大変だったことは何ですか?
藤田工場長:
タイ人スタッフが長年個々にデータ管理していたこともあり、導入に抵抗があったことです。
編集部:
それをどのように克服されたのですか?
山下社長:
各個人のExcel管理を排除し、本来“あるべき”仕事の流れの構築が大切だと、従業員に繰り返し伝えました。
編集部:
MATさんからは約2年の導入スケジュールが提示されていたと伺っています。
その間のサポートはいかがでしたか?
阿部氏:
日本のベンダーよりもはるかに迅速な対応でした。
またグループウェアを使用し、関係者全員で情報共有したことも良かったと思います。
山下社長:
会社業務を深く理解していただき、自社のシステムを構築するように対応いただきました。
当社のタイ人スタッフも、MATさんのSEの方を非常に信頼しています。
編集部:
システム導入後の変化を教えてください。
山下社長:
間接業務に関わる社員の業務を中心に、業務効率が顕著に向上しました。
この領域は改善に苦慮していた領域なので、これは大きな効果です。
藤田工場長:
ERPシステムのMRP(資材所要計画)機能により、原材料の欠品等による緊急の工程替えがなくなり、安定した製造業務が遂行できるようになりました。
阿部氏:
過去に例のない生産高の状況下でも、必要な工程に必要な工数を計画通りに投入できるようになりました。
また、約50台のハンディ―ターミナルの導入により、工程進捗や在庫の状況をほぼリアルタイムで把握できるようになりました。
山下社長:
ほかに、スタッフの意識にも変化が現れたようで、「計画的な生産は作業を効率化する」という考え方が理解され始めました。
また、責任の所在が明確になったことで、タイでよく見られる“他責の文化”を排除できる足掛かりが出来たことが、将来に繋がる大きな効果だと感じています。
編集部:
今後の計画などをお聞かせください。
山下社長:
当社は過去数年、順調に業績を伸ばし、今後も継続的な成長を見込んでいます。
しかし、これからは投資を抑えつつ、場所や人員や設備の稼働を上げていくことが課題です。
システム化により現状がリアルタイムに可視化されたことで、適正な人員配置などの管理に取り組みやすくなったと感じています。
会社の構造を変える、今がその転換期だと思っています。
編集部:
本日は貴重なお話をありがとうございました。