長井技研タイランドの長井社長と交邦磨棒鋼センターのタイ現地法人KOHO PRECISION BAR AND METALS(以下、KPBM)の安井副社長を繋ぐのは、タイにおける高品質の「みがき棒鋼(英名Cold drawn bar)」である。
みがき棒鋼とは、棒鋼またはコイルを素材とし、ダイス(金型)で引き抜き加工した寸法精度の高い棒鋼二次製品のこと。
みがき棒鋼は自動車を筆頭に、輸送機械、建設機械、電機・精密機械などのシャフトやボルト、ナット、ネジ等の機械部品を作るための中間素材で、これなくしては製造業は成り立たない。
長井技研が高品質なカスタム製品を作る材料としても、KPBMが販売する日本品質のみがき棒鋼は欠かせない。
名古屋市にある本社は “みがき棒鋼のコンビニエンスストア” として主に“みがき”と呼ばれる精密みがき棒鋼を在庫販売しており、タイでも同様に鋼種・形状・サイズが600種類以上の在庫を持っている。
「当社のみがき棒鋼の在庫はすべて日本製品で、タイに輸入しています。鋼種としては、SS400、S45C、SCM415、SCM435、SK4F-Gを保有しています。(安井)」
「日本では容易に手に入る“みがき棒鋼”だが、ここタイでは精度の高い鋼材の入手は難しい。また、丸い形状はタイにもあることはあるが、フラット、四角といった形状のものは流通していない。KPBMには、いろいろなサイズ・材質の みがき棒鋼があります。当社の製品作りに、なくてはならない素材です。(長井)」
「タイでも入手できる“黒皮(くろかわ)”と呼ばれる、表面が黒くなっている鋼材を削るよりも、当社のみがき棒鋼はサイズが豊富なため、切削する時間や手間が大幅に短縮できます。タイの安い鋼材に比べると値段は若干高いものの、品質を見ていただければ、納得していただけると思います。(安井)」
「長井技研で使う鋼材は部品の大量生産用ではありません。KPBMは少数でも購入できるのはありがたいです。(長井)」
「ご注文ロットも定尺品1本・切断品1個から対応しております。タイでは油で汚れた鋼材をそのまま持って行ったりしますが、当社ではひとつ一つ丁寧に拭いて、切粉や大きなバリも取り除いて袋詰めしたものをお客様へお届けしています。(安井)」
長井技研とKPBMの関係は顧客とサプライヤーの垣根を越え、共同でイベントに出展することも計画している。
2020年5月に開催の「FBCバンコク2020ものづくり商談会」に共同で出展する計画は、COVID-19の影響で残念ながら流れてしまった。
共同で出展するとは、どういうことなのか?
「みがき棒の価値を、購買のスタッフは分からないんです。(長井)」
「単純に値段だけ見ると、確かにタイのローカル店の方が安い。しかし、トータルなコストと、品質を見極めることができる現場の設計スタッフが見れば、絶対に当社のみがき棒を選ぶはずです。(安井)」
「イベント会場でみがき棒をただ展示していても伝わらない。KPBMの隣に当社のブースを構え、みがき棒を使った製作の具体的な説明を行ないます。(長井)」
日本は鋼材の厚さに、6mm、9mm、12mmという基準があるので、設計がしやすい。試作品は小さいほど材料コストが高くなるため、最初から寸法が決まっているものを使った方が、機械設計をする人にとってはコストカットができるという。
「タイでも、みがき棒鋼を使うメリットを広く伝えていきたいと思います。(長井)」