神奈川県川崎市に本社を構える株式会社FOMM(以下、FOMM)。水に浮いて水面を移動できる小型電気自動車「FOMM ONE」の自社開発に成功し、国内外から注目を浴びているベンチャー企業だ。
代表取締役CEOの鶴巻日出夫氏は1982年にSUZUKIに入社し、二輪車のエンジンから車体まで幅広い設計を担当。その後もトヨタ車体で超小型EV「コムス」やトヨタのパーソナルモビリティ「i-unit」の開発に携わるなど、約30年にわたり技術畑を歩んできた。そんな鶴巻氏の転機となったのは、2011年に発生した東北地方太平洋沖地震。自動車で逃げた人々が津波に巻き込まれ、多くの犠牲者が出た。
当時、自動車での避難が間違いだったのではとの議論が挙がったが、鶴巻氏の思いは違った。「水で浮く電気自動車がもしあったならば、一人でも救える命があったのではないか」。その思いは日に日に募り、自らメーカーを立ち上げるべく独立。13年2月、FOMMが誕生した。
FOMMの主な事業は3つ。先に挙げたFOMM ONEをはじめとする小型モビリティの企画・開発、モビリティ情報の統合管理アプリ「Battery Cloud」を中心とするIoTサービスの提供、車両の生産を行う小規模工場「Micro-Fab」の展開だ。タイでは創業翌年からバンコクモーターショーへの出展を行ない、16年に現地法人FOMM (ASIA) を設立するなど同国市場へ参入。19年3月からはチョンブリ県に完成した工場での量産を開始している。
今後は自動運転事業への展開を視野に入れつつも、まずはこれからの社会に適した小型モビリティの普及、さらにはMicro-Fabを世界各地に広げていくことに注力し、地球環境の保全や地域経済の発展に貢献したいとする鶴巻氏。「FOMMに係わるすべての人が共に成長して、生活環境・経済においてイノベーションを起こす。それが我々の社会的意義だと思っています」
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