在庫管理の精度を上げ、在庫切れや過剰在庫、納入ミスを防ぎたいというニーズは根強い。だが、パッケージ化された在庫管理システムでは使いこなすのが難しく、ハードルが高いと考える企業も少なくない。いかに現状の業務フローを踏まえた現実的なシステムを導入するか。その命題に応えて好評を博しているのがトーマステックの在庫管理システム「PEGASUS」だ。
今回は、金型事業やプラスチック成形事業を手掛けるSanko Mold and Plastics (Thailand) Co.,Ltd. (以下、SMPT)での導入事例をご紹介しよう。
現場で使用しているフォーマットを活かした運用
三光金型(愛知県みよし市)の100%子会社として2012年9月に設立したSanko Mold and Plastics (Thailand) Co.,Ltd.(SMPT)は、二輪や自動車向けのプラスチック樹脂部品を生産している。製品取り扱い点数は年々順調に拡大し、5年前には10台に過ぎなかった成形機の数も27台に増加。それに伴い、在庫管理にまつわる問題点が膨らみ始めた。
▲SMPTの工場設備、製品一例
「担当スタッフが在庫数をホワイトボードに記入し、随時アップデートを行っていましたが、どうしてもヒューマンエラーが避けられない。在庫があると思っていたら実際にはなかったり、違った製品を納入するというミスも多発していました。この問題を解決するために導入したのがトーマステックの在庫管理システムです」(SMPT中島氏)
導入の決め手は、同社が使用しているフォーマットをそのまま運用できるカスタムメイドの仕様にあった。
「当初はできあがったソフトを検討していましたが、高額な上にこちらが業務プロセスを合わせなければならない。その点、トーマステックのシステムはカスタムメイドが可能でした。在庫管理のフローや要望について細かくヒアリングしてもらい、何度もすり合わせを行った上で、ほしいと思う機能をソフトの中に盛り込んでもらいました。使い慣れているExcelをそのままプログラム上で利用できるため、現場スタッフにも違和感がありません」(SMPT中島氏)
注文と異なる製品を納入するエラーが激減
同社が導入したトーマステックのシステムのポイントは以下3つである。
「弊社では5日分の在庫を持つのが基本です。顧客別、製品別のPOを稼働日で割ると発注点数量が算出できますが、在庫が5日分以下になるとオレンジ色、3日分以下で赤色でアラートを通知する仕組みとなっているため、発注作業の効率化が図れています。出庫の際には、今日は何をいくつ出せばいいのか、その製品は何処にあるのかという情報が表示される為、その表示に従って倉庫の番地(製品が置いてあるロケーション)に取りに行けばいいので間違いがありません。いずれも、現場で起きていた問題を防ぐために対話を通して作り上げてもらった機能です」(SMPT中島氏)
▲現場作業指示用KANBANにQRコードをつけることでロケーションを正確に管理
▲QRコードでの管理により FIFO(先入先出)がスムーズに行えている
まだ完全なシステム移行は完了していないが、現場スタッフからは好評であるという。何より、注文と異なる製品を納入するというエラーが大幅に減っている のは大きな収穫だろう。
いずれは材料管理や仕掛り品管理にまで拡張
今後は、在庫管理システムを材料管理や仕掛り品管理まで広げ、在庫切れのリスクをなくし、適正在庫による在庫管理を検討している。
さらに、近い将来、ベトナムで稼働している工場でも材料や部品の在庫管理システムの導入を予定している。タイとは異なり、材料のリードタイムが長く、1回の発注量も非常に多いため、検討課題も多いが、現場・倉庫・発注担当者の三者の協力を仰ぎながら、スムーズに稼働できるシステムの導入に向けて準備を進めている最中だ。
現在の同社の取り扱いアイテム数は約300点。新規取引先が増えているため、アイテム数はさらなる増加が見込まれている。
「アイテム数が増えればますます在庫管理システムの重要性が高まってくるでしょう。システムは誰もが簡単に早く使えて、かつ継続できなければ意味がありません。
シンプルイズザベスト。加えて、導入後のプログラム変更などの微調整についても柔軟に対応していただき、感謝しています。これからも運用しながら軌道修正をかけて、現場の誰もが使いこなせるシステムに育てていきたいですね」(SMPT中島氏)
現場の業務フローを活かしながら、作業効率化や作業精度の向上を図るトーマステックの在庫管理システム。それを可能にしているのは、顧客に寄り添い、いま抱える問題点を正確に拾い出して解決を図ろうとするフレンドリーできめ細かな対応力ではないだろうか。