近年、「トレーサビリティ」という言葉は、広く周知されるようになりました。しかし、その概念や導入方法などは、まだまだ知らない方も多いのが実情です。製造業においても、重要度が増す、トレーサビリティについてを前編・後編の2部に分けて発信。前編では、トレーサビリティの概念、日本で広まった契機などをお伝えします。
『トレーサビリティ』という言葉は、製造業に携わる方であれば一度は耳にしたことがあるかと思います。ですが、「トレーサビリティとは一体何?」と聞かれると、その詳細を伝えることは難しいのではないでしょうか。
トレーサビリティ(Traceability)とは、英語の「Trace(追跡)」、「Ability(可能性)」を組み合わせた造語で、「追跡可能性」と訳されます。部品や製品をロット番号やバーコードなどで識別できるようにし、「いつ」「どこで」「誰が(誰によって)」製造したかを追跡する概念・方法のことで、一般的には原材料の調達段階から、生産・製造、そして消費者の手に渡る(廃棄)までを追跡できる状態にすることを指します。これにより、食品または(工業)製品に問題が発生した場合でも速やかな対応ができるようになります。
日本でトレーサビリティが広く知れ渡る契機となったのが、アメリカで発生したBSE(狂牛病)問題です。2003年にアメリカで発生した乳牛のBSE問題により、日本をはじめ、世界各国から牛肉の禁輸措置を採ることになりました(現在、日本では生後30カ月未満の若齢牛に限り禁輸解除)。
これが端緒をなし、牛に個体識別番号を付け、生年月日・性別・飼育者などの情報を一元管理する「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法(通称:牛トレーサビリティ法)」が2003年(牛肉への表示などの規定は04年から)に施行されました。これにより、「トレーサビリティ」という言葉が日本中に広まっていくことになったのです。
製造業におけるトレーサビリティの歴史は古く、戦前まで遡ります。戦前の日本では、製番管理・号機管理と呼ばれる方法で生産管理を行ってきました。これらは現在でも広く採用されており、日本におけるトレーサビリティの基礎ともいえます。
製番管理とは、同じ仕様の製品に対し製番(製造番号)と呼ばれる管理番号を付け、その製番によって生産を管理する方法で、個別受注生産に適しています。それに対し号機管理は、機械(製品)1台ごとに番号を付けて管理していく方法です。機体ごとに部品管理を行う航空業界では欠かせない方法となっています。
家電製品やガス機器などの事故や不具合の発生について、ニュースで大々的に報じられているのを目にした方も多いでしょう。近年では、小さな不具合からリコールに発展する場合も多く、製造業においても消費者の安心・安全に対する意識は年々厳しさを増しています。特に、自動車の重要保安部品に関しては製造者責任が重く、ヨーロッパなどの先進国へ輸出する際には、トレーサビリティの運用が義務付けられています。
もし、製品に欠陥や不具合といった品質問題が発生した際には、速やかに有効な対策を講じなければ、消費者はもちろん、取引先の疑念をも煽ることになります。その結果、企業の存続に直接影響するような金額の損害賠償事案にもなりかねません。
トレーサビリティは消費者へ安心を届けるといった側面以外にも、企業や組織を守る自己防衛手段であるといえるでしょう。
次回はトレーサビリティ導入・運用方法などを、より詳しく説明していきます。
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