錆びにくいステンレス鋼シャフトなど高精度シャフトの製造を得意とする「株式会社YSK」。日本での創業から半世紀以上が経ち、その高い技術は誰もが納得をするところ。しかしながら、国内市場は少子高齢化などから縮小が続き、劇的な展望の変化は見込めなくなっている。そこで活路を求めて踏み出したのがタイの市場。2013年にタイで設立されたYSK AXXEL社は、現在多くの企業からの信頼を集めている。2年前からはローラーやリニアシャフトなど摩耗部品の再研磨サービスに着手したところ、予想を超えた客先の反応が!今回は、手応えや今後の見通しについて、芝原成秋チーフ・マネジャーに話を聞いた。
「再研磨は日本のYSKには存在しないサービス。摩耗したら、新しいものに取り替えるというのが日本の一般的なスタイルです。ところが、ここはタイ。新しいロールを日本に依頼すると納期はかかるし、コストも高い、それならば再生して使えばいいではないかという、独自の文化があります。たまたま当社宛に、(再研磨)できないかと問い合わせがあったことが、そもそものスタートとなりました」
こう語る芝原氏は、顧客の悩み事、心配事に常に真剣勝負。この時も「(再研磨サービスが)本当に仕事になるのか。十分な満足のいくサービスが提供できるのか」、ずいぶんと悩み、実用化するまで検証にたっぷり1年を要したという。
結果、納品した再生品は顧客の満足するものとなり、その評判は口コミで拡大。例えば、タイローカルのコイル業界組合内で話になるなど、「何の宣伝もしないのにお声がかかるようになった」。その量は、多い月で150万バーツにもなるそう。日本で蓄積された少量多品種の高い技術が、タイ進出時は想定しなかった新しい分野で花開いた瞬間だった。
だが、新たな悩みもあるとのこと。部品再生には一般的に、「熔射(ようしゃ)」という融解させた鉄などの材料を摩耗した部分に堆積させる課程が存在する。ところが、この技術を提供できる企業がタイには低価格で存在するのだが、品質の安定やマスキング処理など、なかなかうまくいかない。金属メッキでカバーしようと思っても、摩耗の程度が激しくて非常に高価になってしまうというケースも少なくない。こうした点が「需要に十分に応えられる体制にはなっていない」と芝原氏には映るという。
とはいえ、求められている以上、最善を尽くすのが同社の伝統的社風でもある。タイ現地製作の地の利を活かして、常に次の一手は頭の中。いつも考える先に顧客のニーズがある。「早々に、十分なニーズに応えられるだけの体制に持って行くことが私に課された優先課題」と芝原氏は話す。
「タイで商売をさせてもらっている以上、タイ人が主体となって事業展開するのがごく普通なあり方」と、スタッフの増員にも積極的だ。4年前の着任時から3倍近くの人数となり、今期は念願の支店設置の方向性も見えてきたとのこと。今後の欧米市場進出の足がかりのためにも、新たな人材採用も念頭に置いている。「考えることは無限にある」。芝原氏、そしてYSK AXXELは常に真剣勝負だ。
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